モノグラムを知っていますか?
おそらくモノグラムという言葉を聞くとルイ・ヴィトンを思い出す人が多いかもしれません。
モノグラムは2つ以上の文字を組み合わせてつくられた記号の一つで、その歴史は古く写本などの様々な文献でも見ることができます。
この記事では一般的なモノグラムについて書きますが、ロゴマークのデザインなどに使われることも多いので、ルーツを知っているとデザインを見る目も変わって面白いですよ!
この記事では、
- モノグラムの由来と歴史
- モノグラムが使われているデザイン
- モノグラムのデザインのつくり方
についてまとめました。
モノグラムを使ったデザインの参考になれば嬉しいです。
モノグラムの由来と歴史
モノグラム(英:monogram)とはサイファー(英:Cipher)の一つです。
サイファーとは、1つもしくは2つ以上の文字が絡み合うデザインまたはマークのことで、個人や団体のロゴマークなどで使用されています。
組み合わされた文字の中に共有するストロークが1つある場合を、モノグラムと呼びます。
この記事のアイキャッチのマークはサイファーですが、DVFの組み合わせのみモノグラムに当たります。
下の画像の左側DDHの組み合わせはモノグラム 、右側DDGの組み合わせはサイファーと呼びます。
王族や貴族などの上流階級は、テーブルリネン、カトラリー、その他の家庭用品にオリジナルのサイファーやモノグラムを入れるようになり、裕福さのシンボルのように扱われるようになりました。
このような文字の組み合わせは、紀元前350年頃にコインに刻まれたものが最初で、コインを発行したギリシャの都市名や鋳造所名が刻まれていました。
また、芸術家や職人たちは、絵画、彫刻などの作品の署名にモノグラムやサイファーを使いました。
所有者を識別するための方法として、署名、印章、通貨に使われたものが、個人のアイデンティティーを表すブランディングのツールとして発展したのです。
引用:American Numismatic Society
メロヴィング朝時代から14世紀にかけては独特なスタイルのモノグラムを見つけることができます。
下の画像は中心に母音を配しているスタイルです。
MGスクール配布の資料
出典:MGスクール配布の資料
現代もっとも有名な文字の組み合わせは、ルイ・ヴィトンのLVのマークです。
モノグラムと名付けられましたが、こちらは正確にはサイファーにあたります。
ルイ・ヴィトンの息子であるジョルジュが、デザイナーの荷物の偽造を防ぐ方法として開発したもので、丸い模様は日本の家紋からのインスピレーションです。
日本の家紋と西洋の紋章は、同じような考えで発展してきたもので、それぞれ固有のアイデンティティをあらわすものです。
また、シャネルの「C」を2つ組み合わせたシンボルマークもサイファーです。
このように文字を組み合わせることは、名声のシンボルとして発展し、高級ブランドのブランディングツールとしてよく使われています。
画家アルブレヒト・デューラーは作品の署名として、頭文字AとDを組み合わせたサイファーを使っていました。
頭文字を組み合わせてつくられるモノグラムやサイファー以外にも、単純に文中などで2文字以上連結した文字の組み合わせを見ることができます。
これらは合字(リガチャー)や、速記記号などと呼ばれ、モノグラムやサイファーとはまったく異なるものです。
別記事で紹介します。
モノグラムが使われているデザイン
サイファーとモノグラムの違いは文字が結合しているかどうかで、同じような目的として使用されます。
一般的にはモノグラムという名称で呼ばれていますが、モノグラムよりサイファーの方が読みやすいこともあり、実際にはサイファーである場合がほとんどです。
このようなマークは所有者を認識するという実用的な理由から始まり、現代では高級ブランドを筆頭に、スポーツチーム、会社などの団体のロゴマークなどに使われることが多いです。
また、ウエディングシーンでは新郎新婦のイニシャルを組み合わせたマークとして、招待状やメニュー、招待客への引き出物などに使われます。
高級ホテルなどでは、タオルやバスローブなどのリネン類やレストランで使用されるクロス類などのアイテムにモノグラムが刺繍されていることがあります。
これと同じように、家庭用のリネンや衣類などには夫婦のイニシャルの組み合わせが使用されます。
実際によく使われているアイテムは、
- カトラリーやグラス類
- レターペーパーや封蝋
- ジュエリーやアクセサリーなどの貴金属類
など、いずれも所有者を識別するための目的から発展しています。
イメージとしては、子どもが保育園や学校で使う所持品に名前をつけるのに似ています。
家庭用のアイテムではそれぞれの素材にあわせて、プリント、刺繍、彫刻、手描きなどでモノグラムを施しますが、工芸的な技術によって、識別という実用的な目的を美しく表現する西洋の美意識は今でも引き継がれています。
現代ではモノグラムやサイファーを持っていれば、工芸品に近い表現をマシンメイドでも手ごろな価格で実現できるようになりました。
だからこそ、美しいデザインをつくることは価値になります!
また、本の所有者を表す蔵書票(エクスリブリス:Exlibris)にモノグラムやサイファーを使うことがあります。
蔵書票では、紋章やモットー、挿絵などと合わせて、Ex-librisの文字とイニシャルを入れるケースが多いようです。
現在では、実用性よりも趣味的になっています。
このような世界観を演出したい時に参考になりますね。
モノグラムのデザインのつくり方
では実際にモノグラムをデザインするためにどんな知識が必要なのでしょうか?
モノグラムを具体的にデザインする場合のコツはあるのでしょうか?
ここでは使用目的はさておき、自由に自分でモノグラムをデザインするという前提で話を進めます。
何でも好きな文字でOKですが、迷ったら自分のイニシャルや夫婦のイニシャルにしてみましょう。
書体は時代背景によって醸し出す雰囲気が違います。
直感的に好きだなーと感じる書体をいくつか選んでみるのもいいですが、醸し出したい雰囲気の時代、国で使われていた書体の中から文字を選んでみるのがおすすめです。
同じ文字でも書体によって、形状が違うので、いくつか候補を上げておくと良いでしょう。
文字を組み合わせる時のコツは、文字同士が交差する位置を、なるべく線上の真ん中とか、三等分のような位置に持ってくることです。
要は、線同士の交差によって分割された空間が一定の割合になるように調整すると美しく見えやすいです。
既存のフォントをそのまま組み合わせるのは、なかなか難しいため、可読性を維持しながら調整をかけていきます。
調整は、
- 空間が大き過ぎた箇所に飾りを入れる
- 書体を変える
- 文字のラインを動かす
で行います。
文字に調整をかける=崩す場合は、文字と書体の知識が必要になります。
これは人間の骨格みたいなもので、
例えば、Lの縦棒(ステム)は自由に伸ばすことが可能ですが、横棒より短くなるとバランスが崩れ、Lと認識できなくなります。
Lが二つ並ぶ場合は、後ろのLの縦棒を長くしてリズムをつけるなど、デザインする上で最低限の知識は押さえておきたいところです。
配置には明確なルールがあるわけではないので、文字の位置を色々動かして、しっくりくる位置を見つけるように訓練すると、センスも磨かれますよ!
ちょっとしたデザインの練習と思って、手の空いた時にでも、ぜひ試してみてください。
まとめ
識別という機能の必要性から生まれ、それを美しく発展させてきたのが現在のモノグラムやサイファーです。
シンプルのイニシャルの組み合わせでつくるので、作り方のコツを押さえておくととても役立ちます。
現代では、目に見えるものに対して美意識よりも合理性が上回っているような気がします。
とはいえ歴史の流れを見ると、人間はやはり美しいものを求める心を持っているということがよくわかります。
モノグラムやサイファーは美意識に気づく身近なツールでもあるので、ぜひデザインに取り入れてみましょう!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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