今回紹介するお仕事事例は、SUWA(諏訪貿易株式会社様)のジュエリーデザインです。
SUWAは100年以上の歴史ある宝石商で、海外で見つけた高品質の宝石とそれらの石を使ったジュエリーを販売している会社です。
私がSUWAのお仕事をさせていただくきっかけとなったのは、2012年にラフダイヤモンドジュエリーコンテストで最優秀賞をいただいたことです。
デザインだけでなくその中に込めたストーリーとコンセプトを評価していただきました。
ラフダイヤモンド(アンカットダイヤモンド)とは、加工されていないダイヤモンドの原石です。
まだまだ認知度が低く、SUWAが唯一高品質の石を持っていると言っても良いほどです。
諏訪恭一氏は、米国宝石学会(GIA)宝石鑑別士(G.G.)資格を日本人第一号として取得し、宝石の美しさを熟知しており、ダイヤモンドへの熱い情熱をお持ちの方です。
お話を伺っているうちに私もすっかりアンカットダイヤモンドの魅力にほだされて、デザインをご提案させていただくことになったのです。
今回のデザインの目的は「宝石を魅力的に見せるため」です。
その話を聞いて私の中に浮かんだのは、「大切に育てた娘を社交界デビューさせる時に、ぴったりの衣装を用意してあげる親心」というようなイメージでした。
小さな石のためのイニシャルのペンダントヘッド
最初にお話をいただいたのは、小さなサイズのダイヤの原石を使ったデザインでした。
世界に一つしかない石ということから、アイデンティティーを感じさせるイニシャル入りのペンダントヘッドを考えました。
チェーンに通して一つだけでも複数を組み合わせても使えるものです。
私はカリグラフィーを書いているのですが、それを通して文字の知識を多く持っていたこともこのアイデアに影響しています。
ドイツ人デザイナーのデザインした書体をベースにして、立体的にデザインをおこしました。
石の持つ不均衡な形状に合わせてアールヌーボー風な曲線を使って石留めをしました。
17ctの巨大なダイヤモンドをエベレストに見立てたデザインに
17カラット以上もあるうえに原石のままでも十分な輝きを放つ希少なダイヤモンドを、展示会で紹介するために、石が引き立つようなデザインを行いました。
一般的にダイヤモンドの価値は、研磨した状態でクオリティが決まります。
この原石は二つにカットして研磨しても、ダイヤモンドとして価値があるのですが、できれば自然のままの姿でジュエリーとして生まれ変わらせたいという願いをうけて、デザインさせていただきました。
この石は、ブラックライトを当てると青く輝きます。
昼の顔と夜の顔が垣間見えるワイルドなダイヤモンドの原石なので、男性にも使ってもらえるようなガッチリしたデザインのリングを考えました。
この石をみた第一印象は、世界一の山・エベレストでした。
アームには山頂に至る曲がりくねった道のりのイメージをストレートに形にしました。
リングの内側には石のくぼみを西洋の大聖堂のドームに見立て、自然と人工の二つの側面からの荘厳な世界観をデザインに落とし込みました。
今回の主役は17ctの大きなダイヤモンドの原石です。
ストーリー性のあるデザインを纏わせることで、展示会場という華やかな場所で関心を持っていただくと同時に、話のネタとして来場者さんとのコミュニケーションのお役に立てるのではないかと思います。
今回ご紹介したデザインの制作をしてくださったのは海外でも活躍されていたジュエリークリエイターの松川覚氏です。
平面から立体へとデザインを展開する際に、私が伝えたかった微妙なニュアンスを丁寧に掴み取る才能にあふれた方で、SUWAのデザインも数多く担当されています。
ジュエリーを専門としない私ですが、優秀な表現者の方と組むことで一人ではできない仕事が実現しました。
デザインの仕事の可能性を感じていただけたら嬉しいです。
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