今回紹介するのは、Pebeo(ペベオ・ジャポン株式会社様)のワークショップです。
Pebeoは南仏にある画材メーカーで、特にクラフト系画材が人気で、世界中で愛されています。
美しい発色と個性的な質感が魅力的な絵具は、趣味からプロの仕事まで通用します。
私がPebeoを知ったのは知人の作家さんからの紹介がきっかけでした。
ペベオ・ジャポン代表の大迎雄策氏は、当時から多くの人にこの画材を知ってもらいたいということで、自らの足でどこへでも出向いていき、積極的にプロモーション活動を行っていました。
もともと絵画が好きで画材の業界に入ったという大迎氏は、ペベオ・ジャポン設立時から一人でワークショップをして日本中を回っていたそうです。
私と知り合った時も、クラフトやホビー系の作家さん、アーティストの方々に積極的にお声掛けをして、様々な場所でワークショップを行っていました。
ワークショップの目的は、実際に画材の使用感や使うことの楽しさを知ってもらうことです。
見た目に惹かれて、画材を買っても、そのまま使わないのはとてももったいです。
絵を描いたり、ものづくりを、日常的に生活に取り入れてという想いもあったのです。
画材の特長を活かしたサンプルを制作
Pebeoの画材は根強いファンも多く、特定の画材を専門に作品制作をする作家さんもたくさんいます。
また、まだ作風のかたまっていない駆け出しのアーティストの方にとっては、Pebeoの画材からインスピレーションが得られると思います。
私自身は、このワークショップを始める前は、デザインとそれに関わるアートワークの制作をしていました。
印刷や映像で使うことを前提としたアートワークなので、IllustratorやPhotoshopなどのアプリを使って、最終的にはデータ化されます。
データ化や大量生産ではないアートワークの仕事は、初めてだったのでとても楽しんで関わることができました!
画材の魅力を伝えつつ、絵に親しむという経験が少ない方に、自分にもできそう!と感じてもらうにはどんなサンプルが良いのか?デザインを考えていきました。
実際のワークショップで、
- サンプルと同じものをつくる
- サンプルからイメージを広めて自由に描く
- サンプルの下絵を用意して写して描く
などの、いくつかの場面を想像してサンプル制作をおこないました。
ワークショップごとに事例を紹介します。
大規模イベント向け:指で描く絵具・フィンガーペイント
指で描ける絵具・フィンガーペイントを使って、専用のキャンバスに描いたサンプルです。
こちらは2015年のDIYショー用に作成したサンプルです。
この絵具は子供やお年寄りでも安心して楽しめるので、誰でもかんたんに、しかもかわいく描けるような絵柄を考えました。
ドーナッツとアイスクリームはとても人気の絵柄で、このサンプルを見ると参加者が喜びます。
フィンガーペイント以外の画材でもかんたんに描けるモチーフなので、何を描くか迷った時に描いてみてください。
指で描く場合は、色と形だけで何を描いたかがわかるモチーフを選ぶと誰でもうまく描けます。
店頭プロモーション向け:布に描ける絵具・セタカラー
フィンガーペイントと並んで人気のセタカラーは布専用のアクリル絵の具です。
以前はステンシルを使ったワークショップが主流でしたが、ステンシルだとデザインが決まってしまうため、どうすればもっと楽しんでもらえそうかを考えた末、下絵を用意することにしました。
クリスマスのデコレーションを絵の上で自由にやってもらえるようなイメージで作成しました。
支持体には実用性の高いエコバッグを使っています。
生地が薄いバッグは、中に下絵を入れると線がうつるので、それを写して塗り絵のような感覚で絵を描くことができます。
絵が苦手という場合の大きな原因の一つは「形が取れない」ということです。
なので、そこさえクリアすれば、最初の一歩が踏み出せます。
セタカラーは筆を使って描くので、フィンガーペイントよりもさらにこまかくきっちり描けます。
このサンプルは、色数豊富なセタカラーに加えて、チューブタイプの絵具で細かい線や点を入れています。
クラフト系の面白い画材がいろいろ揃っているのもPebeoの魅力です。
店頭では月に一度のペースでワークショップをやっていたので、季節感のあるモチーフを選んだり、様々な描き方でサンプル制作をしていました。
次の画像は、絵を描くのが趣味でしっかり描きたい人でも楽しめるサンプルです。
セタカラーは、水で薄めずにしっかり絵具を重ねてかけるので、描写をしっかりしたい人にとっても手応えのある絵具です。
絵具の乾きが早いので、短時間でもこのサンプルくらいの絵が描けることをサンプルでアピールします。
トールペイントや油絵を描いているという方は、このサンプルが刺激(?)になったのか、かなり集中して描かれる方が多かったです。
百貨店企画イベント向け:グラスペイント・ヴィトレア160
こちらはガラスに描ける絵具・ヴィトラーユのサンプルです。
2016年の夏休みに日本橋三越本店7階にある「はじまりのカフェ」でワークショップを行った時のものです。
「はじまりのカフェ」は、カフェを軸にした複合型コンセプトショップで、オープンキッチンのある広々としたワークショップスペースが完備されています。
このワークショップは、サンプルと同じものを一緒につくりました。
絵具がセットになったワークショップだったので、参加者にはまず描き方のコツを覚えていただき、お家でも楽しんでもらうというコンセプトです。
ヴィトレア160は家庭用オーブンで焼き付けることができる絵具で、絵付けをしたガラスは食器用として使えます!
そこで、大人でも子どもでも楽しめて、日常でも使いやすくて、描きやすいサンプルを考え、具象と抽象の中間ぐらいの雰囲気の「ひまわりをモチーフにしたグラス」をデザインしました。
グラスペイントは、丁寧に描くのはコツがいるため、ざっくり描いても決まるような絵柄で、飲み物の色もわかるように上部を透明にしました。
筆のお尻部分に絵具をつけて点々と柄を描いたり、筆をうまく使えなくてもそれがかえって引き立つようにデザインを工夫しました。
ワークショップをきっかけに絵を描くことに親しんでほしい
画材それぞれの持ち味を活かすようにサンプル制作を行うことで、画材の特長を伝えられるサンプルを用意できれば、ワークショップの半分は成功です。
サンプルを気に入って、ワークショップに参加していただいたりするとやはり嬉しいです。
絵を描くというのは、人間の本能に直結した行為です。
サンプルやワークショップを通して、絵を描くことの楽しさを多くの人に伝えられると良いと思います。