カリグラフィーでもっとも大切な道具の一つがペン先です。
カリグラフィーでは、書きたい書体によってペンの種類を変えます。
カリグラフィーの代表的な筆記具は「つけペン」と呼ばれるもので、ペン軸にペン先を差して使います。
このペン軸とペン先の組み合わせを、ペンと呼んでいます。
この記事では、
- カリグラフィーで使うペンの種類
- カリグラフィーで使うペンの選び方
- 初心者が最初に揃えたいペン先
について紹介します。
カリグラフィーで使うペンの種類
現在、一般的にカリグラフィーで使われるペンは、ペン軸に金属のペン先を差したものが主流です。
ペン先は、ペンニブ(nib)とも呼ばれます。
このペンの先を、ボトルに入ったインクに浸して書くことから、「つけペン」などと呼ばれています。
(ペン軸+ペン先+インクの写真)
現代、私たちが使う筆記具は、インクがカートリッジの様にペンの中に内蔵されているため、インクにペンを浸して書く習慣はありません。
そのため「つけペン」の筆記スタイルは、古めかしく憧れを誘うものであると同時に、ちょっとめんどくさいと敬遠されてしまうことがあります。
最近では、もっと手軽にカリグラフィーを楽しもうという流れもあり、カートリッジ式のペンやマーカーもたくさん発売されていますし、ペンタブの性能もかなり上がってきているので、最新のものを試してみるのも良いでしょう。
実際に私も試してみましたが、ひと昔前より書き心地は進化していますね!
でもやっぱりまだまだ、つけペンの方が書きやすいと感じています。
やはりカリグラフィー の魅力を知ってもらうには、最初はつけペンをおすすめします。
でも、準備がめんどくさくてカリグラフィーを書くきっかけそのもそがつかめないという場合は、とりあえずお手軽な筆記具から試してみましょう。
しかし、綺麗に書けるようになるためには、つけペンで練習した方がの方が良いということも知っておいてください。
つけペンで使えるペンの種類
つけペンは単純にインクをペン先につけるだけなので、木の棒のようなものでも筆記具としては機能します。
昔の筆記具で、ガラスペンというものがありますが、これはペン先に溝をつけて、インクの流れを良くしたものです。
あんまり頻繁にインクが切れてしまうと書きにくいため、ペン先に工夫を施してインクを貯めて置ける様にして使います。
葦ペンや竹ペンのように植物の茎をカットしたものや、羽ペンのように鳥の羽の管を使った筆記具もカリグラフィーで使用します。
これらのペンは、自分で先をカットして整える必要があるので、ある程度カリグラフィーの知識がついてきて、技量が上がってきてから試してみると良いでしょう。
先述したとおり、現在最も代表的なカリグラフィーのペン先は、金属製のペン先です。
では具体的におすすめの金属のペン先を紹介します。
金属のペン先の種類
ネットで「カリグラフィー ペン」などと検索すると、様々なタイプのペンが出てきます。
しかし、実際にカリグラフィーで使いやすいペン先はそれほど多くありません。
ペン先の種類は大きく分けて、次の2種類があります。
- 先端が尖ったもの
- 先端が平たいもの
先端が尖ったものは、カッパープレート体やモダンカリグラフィーと呼ばれる短時間で書く事務系の書体に、先端の平たいものは、従来のカリグラフィーを書くために使用します。
先端の尖ったペン先は力加減を調整して先端の切り込みにかかる圧の強弱で線の太さを調整します。
ここで紹介するのは伝統的なカリグラフィー、つまり力加減とスピードを一定に保った状態で書くため、先端が平たいものを紹介します。
カリグラフィーで使うペンの選び方
伝統的なカリグラフィーでは、先の平たいペン先を使います。
書体を観察するとわかりますが、アルファベットの書体の大半が横線が細く縦線が太くなっています。
平たいペン先をペン軸に差し込んで持ち、固定したままの状態で書くと、太さのコントラストが一定に保たれて、文字の美しさが引き立つからです。
現在のカリグラファーが使っているペン先は、主に次の3種類です。
- ブラウゼ
- ミッチェル
- スピードボール
金属のペン先は、インクの流れを調整するインク留めとセットで使用します。
カリグラフィーを始めたばかりの時は力加減がつかめず、また人によって筆圧が違うので、上述の3種類を試してみることをお勧めします。
それぞれのペン先に特徴があるので、どんな場合にどのペン先を使えば良いのかそれぞれ説明します。
ブラウゼ(独:Brause)
最初に紹介するのは、1850年創業のドイツのブラウゼ社のカリグラフィー用のペン先です。
様々な種類のペン先がありますが、最も汎用性の高いのは次の画像のペン先です。
初心者の頃は力が入り過ぎてしまいがちですが、このペン先は硬めにできているため、傷みにくく、安定した線を作ることができます。
一方、インクが流れやすい角度や力加減が見つからないとなかなかインクが思う様に出ないので、最初はなるべく力を入れない様に、角度や握り方を色々試してみましょう。
先端が少し斜めにカットされているので、右手で書きやすくなっています。
インク留めを上にセットされていて、このインク留めとペン先の間にインクを入れて使います。
ペンの先端からインク留めがはみ出さない様に調整して使いますが、少し硬いので、鉄筆などを使って焼成すると良いでしょう。
ブラウゼのサイズは、mm表記です。
最初は、3mmくらいから始めて、少しづつ小さいサイズのペン先を使える様にします。
3mm、2・1/2mm、2mmあたりを用意しておきましょう。
ブラウゼを使って書くのが適している書体は、「低い角度の書体」です。
書体を書く際には、一定の角度に固定するので、書体には角度が決まっています。
0度や30度、高くても45度までの書体、たとえば真っ直ぐの線が魅力的なローマンキャピタルや、ゴシック系の書体を書くととても美しくシャープな線を書くことができます。
ミッチェル(英:W. Mitchell)
次は、イギリスのウィリアム・ミッチェル社のカリグラフィー用のペン先、ラウンドハンドです。
こちらもカリグラファー必携のペン先で、高い角度の書体を書くときに使います。
イタリック体やルスティカ体など少し柔らかい印象の書体におすすめです。
ブラウゼに比べて金属が薄く柔らかいので、少し力が抜けた状態で書くと、するすると気持ちよい曲線を書くことができます。
力を入れすぎると、すぐにペン先が反って傷んでしまうこともあるので、ブラウゼに少し慣れてから使うのがおすすめのペン先です。
ペン先は真っ直ぐにカットされていて、インク留めは別売りです。
慣れてくるとインク留め無しでも書くことができますが、最初はインク留めをペン先の下にセットして使うのが安全です。
外れると、紙を汚してしまうし、きついとインクが出てこないので、インク留めの調整には少しコツが入ります。
将来、羽ペンでカリグラフィーを書いてみたい人は、ミッチェルで練習すると良いでしょう。
サイズ表記は、1、1・1/2、2、2・1/2のように単位がついていません。
ブラウゼの3mmが、ミッチェルの1に、2mmが2に…というように、ミッチェルはサイズが大きくなると数字が小さくなります。
ブラウゼのサイズ表記にほぼ対応しているのですが、ミッチェルはロッドによってサイズにばらつきがあるので、mmなどの表記をしていないようです。
スピードボール(米:Speedball)
スピードボールは、アメリカのスピードボール社が販売するペン先です。
1899年創業のハント社がルーツになっている会社です。
日本のカリグラフィーは、もともとはアメリカからの流れが主流でしたので、スピードボールをおすすめしているカリグラファーの方も多いです。
ペン先に二本の溝が入っていて、インクの流れが良いのが特徴です。
サイズが小さくなると細い線が出にくくなるので、練習や長い文章を書くにはあまり向きません。
C-2(3mm)サイズは、カードなどを書くにはおすすめです。
インク留めは外せません。
先端は少し斜めにカットされていますが、右利き用と左利き用とカットの向きの違う2種類を用意しているのも、アメリカ的ですね。
初心者が最初に揃えたいペン先
初心者が練習を始めるのにおすすめのペン先のサイズは3mmです。
このサイズに慣れながら、徐々にサイズダウンをしていきます。
小さい文字を綺麗に書けるようになると、大きい文字を書くことはそれほど難しくありません。
3mmサイズで比較すると、スピードボールがインクの流れが良く書きやすいです。
ただ、そのほかのサイズはあまり書きやすいとは言えないので、ブラウゼとミッチェルも同時に揃えておきたいです。
ブラウゼとミッチェルで書くことができれば、他のメーカーのペン先などを使ったり、筆圧調整が繊細な丸ペンへの移行も敷居が低いと考えてきださい。
それを踏まえて最初に揃えておきたいペン先は、
- ブラウゼ:3mm、2・1/2mm、2mm
安定した線が書ける
傷みにくい - ミッチェル:1、1・1/2、2
柔らかく細かい文字が綺麗に書ける
汎用性が高い - スピードボール:C-2
書きやすい
入手しやすい
となります。
新しいペン先を使い始めるときの注意事項とお手入れ方法
金属のペン先は、表面に油分がついていたりして、水をはじいてしまいます。
使う前にペン先を水につけてみると状態が確認できます。
この状態では、インクを弾いてしまい、綺麗に文字が書けないため、表面の油膜(?)を取り除く必要があります。
私がカリグラフィー を始めた当初(10年以上前)は、表面を軽くライターで焼いて使うことが推奨されており、ブラウゼとミッチェルについては、今でも軽くライターであぶって使用しています。
しかし、ゼブラやタチカワといったペン先を扱うメーカーが、火で炙ると金属が変質するので、推奨しないという見解を出したことで、実際どっちなのか?という話題がネット上にも度々みられます。
油分であれば、無水エタノールでさっと拭けばとれるでしょう。
もしそれでも、弾いてしまうようであれば、従来通りに火で炙って使うことをお勧めします。
ペン先の傷みを最小限に押さえるには、インクが入る部分をくるりと回転させながら2〜3秒炙ってすぐに水につけます。
また、練習をする時も文字を書いて一段落したときには、インクをつけたまま放置せずにすぐにペン先を水につけて軽く洗います。
インクの残った状態だとペン先の傷みが激しくなるので、使い終わったらきちんと洗ってよく乾かしておきます。
ガッシュなど顔料系の色材を使った後は、石鹸と使い古しの歯ブラシなどでしっかり洗います。
水につけっぱなしだとすぐに錆びてしまうので気をつけましょう。
ミッチェルはインク留めを外して、ブラウゼのインク留めも外すことができますが、やや硬いので普段きちんとお手入れをすれば、たまに外して洗う程度でも大丈夫でしょう。
スピードボールはインク留めが外せないので、隙間などしっかり洗って乾かすことが大事です。
まとめ
この記事では、カリグラフィーで使うペンの種類と選び方についてまとめました。
初心者が最初に揃えたいペン先は、ブラウゼ、ミッチェル、スピードボールの3種類です。
ブラウゼとミッチェルがあれば、基本的にはほとんどの書体は書けますが、手軽に入手できるスピードボールは、ちょっとしたカードづくりなどにも使いやすいペン先です。
新しいペン先は水を弾くので下処理をしてから使います。
ペン先は錆びやすいので、使い終わったらきちんとインクを洗い落として乾いた状態で保存しましょう。
参考になれば嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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