【デザインの心構え】デザイナーは好き嫌いで仕事を選んでもいいの?

私はこれまで3000件以上のデザイン案件に関わってきました。

デザインのコンサル、ディレクションから制作まで、ロゴやイラスト、各種媒体向けのデザインを担当し、いろんな視点から「デザイン」に関わってきました。

毎日、デザインのことばかり考えているので、すでに好きを通り越して空気のような存在になりつつあります。

どんなに仕事が忙しくても、やっぱり好きだからという理由でデザインの仕事を続けている人も多いことでしょう。

私も過去には、忙しくて辛いから辞めたいなとか、あんまり向いてない気がするとか感じたこともありましたが、結局デザインの仕事の楽しさの方が上回って仕事を続けてきました。

しかし、忙しいとか向いていないかもというような、自分自身に対する不安感とは別に、デザインの仕事そのものに疑問を持つ場面もあります。

「なぜだろうか?」と疑問に感じたことがありました。

デザインの仕事には、必ずクライアントがいますが、どうやら彼らの活動に共感できない時に、もやもやが発生するということに気づいたのです。

そして、この疑問をクリアにするためには、ある明確な基準に沿って仕事を選択することが大切だという考えに至ったのです。

この記事では、

  • デザイナーが知っておきたいデザインという仕事の特性
  • デザインの仕事に疑問を感じる理由
  • 好き嫌いで仕事を選ぶ際の心構え
  • 共感できないけれど断れない仕事への対処方法

についてまとめました。

参考になると嬉しいです。

デザイナーが知っておきたいデザインという仕事の特性

唐突ですが、デザイナーの仕事というのは魔法に似ています。

「は?いきなり何のこと??」って思いますよね。

順を追って説明をします。

デザインの仕事そのものには、主体的な目的はありません。

あるとすれば、クライアントの目的を達成させることです。

要するにデザインとは、目的を達成するための手段にすぎないのです。

しかし、目的を達成する手段に過ぎないといってもその力は絶大です。

なぜならデザインには、印象を操作して目的を増幅させるという特性があるからです。

この特性=力は使い方次第で、社会に優れた影響を与え大勢の人をハッピーにすることもできるし、破壊的ダメージを与えるようなこともできるのです。

実際、日本でも太平洋戦争の最中には、国家宣伝の目的でプロパガンダ・ポスターや雑誌など出版物が多く発行され、デザインの力が発揮されていたのです。

当時の数ある海外向けグラフ雑誌のなかで、デザインとして白眉のものが『FRONT』で、日本帝国が対外宣伝のために1942年から45年にかけて10冊が出版された。…(中略)…見開きページによる写真構成を豊かな表現力と質の高さで他のグラフ雑誌を圧倒していた。

引用:1943年 戦争とデザイン(山内陸柄 20世紀のデザインあれこれ:連載63)

デザインを仕事にする上では、このような史実も知っておくべきですね。

デザインの仕事に疑問を持ってしまうのはなぜか?

デザインの特性をしっかり理解すると、仕事に対する疑問を解決するための手がかりになります。

デザインの特性とは、

  1. 印象操作
  2. 拡散力

ということを説明しました。

ここには善悪のような基準はありません。

デザインの力をどのように使うかは、あくまでデザイナーの手に委ねられているのです。

これらの特性を知ってデザインの腕を磨いていけば、デザインの引き出しも増えてセンスも上がり、かなり自由自在に仕事ができるようになります。

しかし仕事がコントロール可能で自由度が高いはずなのに、もやもやするのはなぜでしょう?

これはある程度の仕事を続けてきて、経験豊富なデザイナーこそぶち当たる壁です。

なぜなら原因は「目的側」にあるからです。

組織の中で働いている場合は、目的自体が芳しくないような案件だとしても断るのは難しいでしょう。

その場合は表面的な目的だけでなくその背景やクライアントについての知識を得ることで、自分が関わっている仕事への理解が深まります。

それでも尚且つ、自分が共感できない仕事であれば、「自分は共感していない」という事実を心に留めて仕事をするだけでも気分が楽になるでしょう。

もし、自分の想いと仕事の間に大きな差異があるなら、そしてそれが埋められないほど大きな溝となってしまった時には、それは職場を離れるサインかもしれません。

いずれにしても、自分の心のあり方を把握することは大事です。

独立して仕事をしている人の場合は、基本的には案件を選ぶ自由があります。

自分の考えに合わない仕事は、受ける必要はありません。

でも、単純にお断りするのも難しいですよね?

あるデザイナーの友人は、「仕事を選んでいると思われると嫌なので(お高く留まっていると思われるので)、内容を聞かずに納期だけ先に聞いて、断るかどうか決める。」と話していました。

たしかに、忙しい時に仕事のボリュームをコントロールするには、このような方法も良いかもしれません。

しかし気持ちよくデザイナーという仕事を続けたいなら、私がお勧めするのは、「内容を聞いて、好き嫌いで決めること。」です。

それでも専門家なのか?

プロならどんなことでもやるべきじゃないのか?

と、厳しい声が上がりそうですが、そんなことは関係ありません!

ここまで言うには明確な理由があります。

好き嫌いで仕事を選ぶ際の心構え

ここで私が言いたいのは、こういうことです。

好きか嫌いかという判断基準は、あなたが共感できるかどうかということです。

「仕事の目的に対して」心からの共感が得られるか?

というのが基本的なポイントです。

作品にならなそうとか、ダサい仕事だからというような自分の都合、つまり二次的な理由で仕事を選ぶのは、それぞれの自由です。

しかし私は、それよりもまず目的に対して純粋に共感できるかどうかを考えて、仕事を選ぶようにしています。

デザインの仕事の話なのに、心の問題ってちょっと大げさと感じるかもしれません。

デザインの仕事は、直感と論理をつなぐ仕事です。

ただつなぐのではなく、頻繁にこの二つを行き来し照合させて、答えを導き出すのです。

だから、デザインという仕事と長く気持ちよくつき合うためには、心の状態はとても大切です。

そのための第一歩は、自分自身をよく知ることです。

自分の本心はどこにあるのか?なぜその仕事に共感を感じるのか?逆に違和感の理由は?

積極的に自分自身に疑問を投げかけて、仕事と自分との関係性をなるべく明確にしておきます。

共感や違和感の理由がはっきりしていると、仕事に取り組む姿勢や自分自身のスタンスなども自ずと決まってきます。

そのことで、デザインそのものにゴールの設定ができるのです。

目的はできるだけ正確に把握するに越したことはありません。

そのためには、目的を決定する過程やクライアントの考え方、関わる企業など、目的だけではなくその背景も知る必要があります。

好き嫌いという感情は、直感そのもの。

あなたの本心、つまり心の声なのです。

クライアントとデザイナーは、上下関係ではなくフラットな関係であるべきだと思います。

しかし、実際の現場ではフラットではないことも多いです。

しかし、フラットな関係性のなかでこそ、本当に役に立つ良いデザインが生まれるということも事実です。

また逆説的ですが、デザインを通してフラットな関係性を築くこともできるということも覚えておきましょう。

「お客様は神様です。」と、昔はよく言ったもので、クライアントの思う通りにしか仕事をしなくなってしまったデザイナーもいます。

言われたことしかやらないとか、指示待ちになってしまわないように気持ちを維持するのも、仕事と楽しくつきあうコツです。

共感できないけれど断れない仕事にどう対処するか?

とはいえ、実際に共感できないけれど断れない仕事が入ってきた場合は、どうするのが良いのでしょうか?

ここでは私自身の例をもとに話を進めていきます。

私は基本的にどんな仕事でも楽しめるタイプで、あまり思い悩むことはありませんでした。

今考えると、悩む余裕もなかったのかもしれません。

ところがある企業の内部で仕事を進めていた時のことです。

仕事をやっている時に、ふと違和感が湧き起こりました。

取引先企業の社員の方を見ていると、様々な人がいて、ある日何となく時間潰しをしているような社員に目が留まったのです。

その人の行動をじっと観察しているうちに、急に「私はなぜこの仕事をやっているのだろう?」という想いが脳裏をかすめたのです。

プロモーション系の仕事だったので、商品を売るという目的があります。

売り上げをあげるのは社会貢献というより、社員を養うためのように見えてきて、社員は時間潰しに会社に来ているように見える。

担当の方は仕事熱心でしたが、考えれば考えるほど何か自分のやっている仕事が間違っているような気がしてきてしまったのです。

だからといって、クライアントに不満があったわけではありません。

あとから振り返ってみて初めて、総合的にその仕事に自分が「共感できていない」ことに気がついたのです。

それからは常に、仕事もしくはクライアントの想いに対して「心から共感できているか」をチェックするようになりました。

その後しばらく共感できないと感じた仕事も請けることで、最終的に共感できない仕事はやらないのが賢明と考えるに至ったのです。

中には仕事自体には共感できないけど、クライアントの「仕事にかける想い」に共感して、仕事を請けることもあります。

単純に「嫌いだからやらない」と内容を把握せずに断るのではなく、その仕事を通して自分が何か得られることはないか?を考える習慣をつけてみましょう。

私は、自分の考え方や心構え次第で、たとえ同じ仕事でも違った学びを得ることを忘れないようにしています。

一つ一つの仕事に向き合うことが成長につながると思います。

まとめ

この記事では、デザイナーが仕事を選ぶ際の心構えと、好き嫌いで仕事を選ぶことについてまとめました。

デザインの仕事は、多かれ少なかれ目的を拡大・増幅し、思わぬ影響力を発揮することがあります

ですから自分自身が、心から応援したいとか、喜んでもらいたいと感じられるような仕事を選ぶ方が、気持ちよく仕事を続けることができます。

そのためには、常に直感を磨くように心がけることが大切です。

最後までお読みいただきありがとうございました。

参考になれば嬉しいです。

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